年頭挨拶【草原会長より】
令和6年を迎えて
日本空手協会会長
草原克豪
全国の会員の皆様、明けましておめでとうございます。
皆様には日頃から日本空手協会の活動にご理解とご協力をいただいていることに心から感謝申し上げます。
昨年は、コロナ禍もほぼ収束に向かい、4年ぶりに各種の行事を平常通りに実施することができました。今年はさらに充実した1年になることを願ってやみません。
空手は言うまでもなく、日本の誇る武道の一つです。武道とは、「武士道の伝統に由来する日本で体系化された武技の修錬による心技一如の運動文化で、心・技・体を一体として鍛え、人格を磨き、道徳心を高め、礼節を尊重する態度を養う、人間形成の道」(日本武道協議会)であるとされています。つまり目的は「人間形成」なのです。
日本空手協会の目的も、空手道を通じて自己を鍛錬し、人格の完成に努め、社会に貢献することにあります。その特徴は、次の4点にまとめることができます。
- 武術としての空手だけでなく、体育・精神修養をも重視した「武道としての空手」
- 技術面においては、「極めのある一本勝負」を重視した空手
- 基本、組手、形の「三位一体」の空手
- 各人の人生段階に応じた「生涯空手」
小学生から高齢者まで、老若男女の誰もが、いつでもどこでも、一人でもグループでも、道具がなくてもできるのが、空手道です。人生のあらゆる段階において自分に合った稽古を続けることができるのです。稽古の場は必ずしも道場だけではありません。日常生活の中のあらゆる場面が空手の修行の場になると言ってもよいのです。皆さんもそのことを理解して、日頃から自分に合った方法で稽古に汗を流し、後進の育成や普及にも努めておられることと思います。
武道においては、身体を動かす技術だけでなく、心を鍛えることも重要です。敵を倒すのではなく、自分自身に克つことが大事です。それが武士道の精神です。
私たちは長い人生において、さまざまな困難に直面します。大事なことは、たとえどのような状況に置かれても、その中で今の自分に何ができるかを考え、工夫し、勇気を出して挑戦することです。どんな分野でもその頂点に立つ人は、それまでに様々な失敗や挫折を経験しています。厳しい逆境を乗り越えて不屈の努力を重ねた人たちばかりです。そうした「努力の精神」を養うことも、空手道を含めた武道の目的です。
武士の「士」とは学問や道徳を修めた人のことです。だから武士は、「文武両道の士」でなければなりません。読書などを通じて自ら学び、教養を身につけなければならないのです。
皆さんも年の初めに改めてこれらのことを確認し、自分に合ったペースで稽古に励み、心と身体の状態を正常に保つよう努めていただきたいと思います。
令和6年が皆様にとって素晴らしい飛躍の年になることを心から願っています。
(2024.1.1)