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第六話:形には深い意味がある【会長 草原克豪】

第六話:形には深い意味がある【会長 草原克豪】

第六話:形には深い意味がある【会長 草原克豪】

空手の形は、徒手空拳として発達した沖縄唐手の技から導き出された一連の動作から成り立っています。その点において、同じように形と称していても、体操競技やフィギュアスケートのように相手の存在を想定せず、単独の身体運動によって技の正確性や難易度、あるいは美的表現力といった芸術性を競い合う形とは大きく異なります。

空手の形は、同じ武道である剣道や柔道の形とも異なります。剣道や柔道の形は攻防の所作をまとめたもので、その数は限られています。それに対して空手の形は、無数の技を組み合わせ、そこに一連の起承転結を持ったストーリーとしての性格をもたせたものなのです。空手の形を構成する動作の一つ一つに、攻防の技としての深い意味が込められているのです。その結果として、空手の形は、武術的な観点からは殺法としてもっとも有効であり、美学的な観点からは、もっとも無駄のない美しい動作となっているのです。

こうしたことから言えることは、空手の形は技の意味を表現したものであるということです。形の動作には空手の奥深い魅力が一杯詰まっているのです。その奥深さを味わうところに空手の醍醐味があると言ってよいでしょう。

では、なぜそのような形が出来上がったのでしょうか。それは、空手においては、その所作の全てを明文化して、それを技法として伝えることが難しかったからだと考えられます。そのため、重要な技を組み合わせた一連の動作を一つの物語としてまとめて、それを後世に伝承・教授するための教材として残す方法が考え出されたのです。言い換えれば、今日の空手道があるのは形のおかげ、まさに形があっての空手道なのです。

形の中には、相手の攻撃を無力化する受けの技もありますし、相手を一撃で倒す攻めの技も含まれています。そのため、形を演じるときには、仮想の相手の動きを常に意識しながら、それに応じて自分の動作、間合い、タイミングなどを微妙に調整して技を繰り出すことが重要になってきます。その意味でも、形と組手は別々のものではなく、一体のものとして稽古する必要があるのです。つまり形と組手は車の両輪のようなものです。だからこそ空手の稽古においては、形と組手のどちらも疎かにせず、両方に挑戦することが大事だと思います。

ただし、形と組手が一体ということは、組手試合においても常に形どおりの動きをしなければならないという意味ではありません。試合では相手の動きに応じて、臨機応変に振る舞う必要があります。また同じ技でも、相手が自分より大きいか小さいかによっても、間合いや、突きや蹴りの角度とスピード、あるいは極めのポイントなども変わってくるでしょう。空手道二十箇条にある「形は正しく実戦は別もの」とはそういう意味です。

 

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